『ベルリンうわの空』|僕にとっての豊かさを知る

 
ドイツのベルリン在住の漫画家・香山哲さんのエッセイ漫画
『ベルリンうわの空』(ebookjapan)。
 

ベルリンの街並みから読み取れる社会の在り方や豊かな生き方について、独自の視点でまとめられています。

とはいえ、難しいことはなく肩の力を抜いて読めるところも本作の魅力。
それこそ、うわの空というか、お散歩感覚?でページをめくっていけるような雰囲気の漫画です。
 
今回は、そんなベルリン紀行エッセイ漫画『ベルリンうわの空』をちょこっとだけ紹介したいと思います。

『ベルリンうわの空』とは

  『ベルリンうわの空』を見る  

 
ドイツ、首都ベルリン。ベルリンといえば、壁、ビール、ソーセージ。だけじゃなくって、様々な文化、様々な人々…、パリや東京とも並ぶ国際都市だ。そんな街で僕は…、僕は…、あんまり何もしていない!ベルリンという街に「なんとなく」で移住してしまった僕は、派手な観光も、胸躍る冒険もなく、ただ毎日を平凡に過ごしている。そんな僕を人はいつも「うわの空」だというのだけれど、僕なりに、些細だけれども大切なものを集めている。ベルリンでぼんやり生きる僕の生活の記録と、街から得られる空想と、平凡な毎日ゆえに楽しめる、ちょっと小さな冒険の書。

 
作者・香山哲さんはドイツのベルリン在住で、漫画家としての活動以外にもイラストレーターやゲームクリエイターなどをして生計を立てている方。
移入者としてベルリンで生活してみて分かったこと、気付いたことを訥々と語るようなエッセイ漫画になっています。
ebookjapanで連載されており、2019年に単行本され発売。
 
独特のタッチと切り口でSNSを中心に話題となっている作品です。

『ベルリンうわの空』で描かれていること

この漫画で描かれていることは、一体どんなことなのでしょうか。
心に響いたところを僕なりに回想して、一つ一つまとめてみました。
 

その①:自分にとって豊かな生き方を探すということ

資本主義社会において、分かりやすい「豊かさ」とは、お金を持っていることですよね。
商社勤め、1000万プレイヤー、ロレックスの腕時計、高級タワマン、ロールスロイス…
これらの言葉は「豊かさ」の象徴として、圧倒的な輝きを放って聞こえます。
しかし、そういった社会通念というか資本主義社会の文脈は、本当に「豊か」なのでしょうか。
考える煩わしさを放棄させてくれるという意味では、ラクっちゃラクではありますが…。
でも、今一度じっくり考えてみるべきなのかも知れません。
そのような社会の共通認識としての「豊かさ」は本当に自分にとって「豊か」なのか、を。
 
参照:https://www.ebookjapan.jp/ebj/special/berlin_up_in_the_air/index.asp

本作は、香山さんがベルリンに移住した理由が語られるシーンから始まります。
 
公道でヤケを起こした酔っ払いをハグして話を聞いてあげる人がいる。
ドぎつい広告はあまり見当たらない。
資源をリサイクルするような仕組みが出来ている。
…とかとか。
 
香山さんは、そんなベルリンの街を「最高(かもしれない)」と思ったとのこと。
なんとなく、優しさを感じる社会が「好き」なんですよね、多分。
 
こういう何気ない景色のなかに、自分が「好き」だとおもえるものを見つけていくことは、自分にとっての「豊かさ」を知ることに繋がります。
実際に香山さんは、ベルリンのような街が「好き」だと分かり、ベルリンでの生活を選ぶことで、日本で生活するよりも「豊か」になっているワケですから。
別に、ベルリンがおすすめ!ということではなく、自分が生きやすいとおもえる場所を見つけて、そこで生きられたら嬉しいよね、という感じ。
本作は、自分にとっての「豊かさ」について思考するキッカケを与えてくれます。
 
そして「豊かさ」を知るための好奇心も、大事だよねーという話。
もしかしたら、ベルリンより(自分にとって)住みやすい街があるかも知れない…から旅行しよう、とか。
もっと流暢にドイツ語を話せたら、ワクワクする情報に出会えるかも…だから語学を頑張ろう、とか。
自分の「豊かさ」に向かって努力していく好奇心も、この漫画が教えてくれる大切なことの一つです。
 
 

その②:ベルリンの都市が教えてくれる社会のあり方

都市の風景は、その社会が目指している方向性を反映するらしい。
 
例えば、公共交通機関では身体の不自由な人に配慮したスペースがしっかり確保されていて、十分に機能しているベルリン。
スリが発生することもあるけれど、結構目撃者が一緒になって犯人を捕まえてくれようとすることも多いようです。
そんなベルリンは、香山さんの言葉を借りると「弱い人に優しい社会」だと言います。
 
「弱い人に優しい社会」っていいですよね。
社会の中で自分が置かれている立場って、常に時代ごとに変わっていきます。
だから今は強い人だとしても、あるいは価値観の変遷によって、あるいは老いによって、弱い人になることも勿論あるワケです。
そうして自分が弱い人(当事者)になった時に、ちゃんと手を差し伸べてくれる社会ってことですから。
 
香山さんがベルリンの目指している社会に共感しているように、自分の価値観に合う社会に暮らすことができたら豊かな生活になる気がします。
 
参照:https://www.ebookjapan.jp/ebj/special/berlin_untergrund/index.asp

また、ベルリンは公園が多く、人口密度も比較的少ないようで、伸び伸びと暮らせる街だそう。

空間的な距離と心の距離とが比例するって言いますよね。
 
密集した空間にいると、人との距離が近くなりすぎてギスギスしてしまったりするけれど、
適度に距離が離れていると、人に対して余裕と思いやりを持って接することが出来るようになります。
ベルリンの人々が余裕があるように見えるのは、広々とした都市に生きているからなんでしょうね。
 
それに、余裕があると人は人に優しくなれます。
その優しさはどんどん伝播して、社会全体の雰囲気を醸成していく要素となります。
だから、街の空間的な余裕は、そこで暮らす人々の心の余裕(ひいては優しい社会)に直結するんですよ、多分。
 
そう考えると、過密都市である東京は、なかなか余裕を持って生きづらいかも知れません。
移住…考えちゃいますね。
 
 

その③:多様性の本質を知る

本作はすべてのエピソードが「多様性」を軸に描かれているような気がします。
「多様性」って非常に便利な言葉であるがゆえに、その解釈が不安定のまま暴走してしまう危険性を孕んだ言葉でもあるんですが。
この作品は、その言葉の本質(のようなもの)に迫っている感じがして、僕はすごく素敵だなと思います。
 
というのも「ごちゃごちゃをごちゃごちゃのまま受け入れる」ということが、とっても自然に描かれているんですよね。
 
どういうことかと言うと…
人種も言語も入り乱れたカオスな街・ベルリンで暮らす香山さんの生活は、「よく分からないもの」が身の回りに溢れています。
その「よく分からないもの」を無理やり規定しようとすれば、出来ないこともない。
けれど、必ずその枠組みから漏れるものが生まれてしまうことも事実です。
 
漏れてしまった人やものは、そこに存在しないことになりがちで。
でも社会には確実に存在するんですよね。
だとしたら、「よく分からないもの」を「よく分からないもの」のまま受け入れる姿勢が重要で。
 
個人個人がそれぞれ好きなことをやっていて、自由に好きなことして生きている。
そういう「ごちゃごちゃした社会」をごちゃごちゃした状態のまま受け入れて、その社会で自分も自由に生きる。
これって多様性の本質って気がしませんか?
 
 

さいごに|構成にもひと工夫があり、遊び心満載

 

参照:https://www.ebookjapan.jp/ebj/special/berlin_untergrund/index.asp

本作は、香山さんの思考をめぐる散文的なエッセイ漫画です。

なんですけど、実はすべてのエピソードをつなぎ合わせるパズルのような仕掛けもあったりして、そこがまた面白いんです。

どんなパズルかと言うと…
それは本作を読んでみて、確かめてみて下さい!
ベルリンの街に隠された、小さな小さな謎解きの物語。
旅の最後に、ほっこりさせてくれるじゃないですか。
 

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