皆さんは『グリーンブック 』という映画をご存知でしょうか?
天才黒人ピアニストが、粗野なイタリア系用心棒を雇い、コンサートツアーのため人種差別が色濃く残る1960年代のアメリカ南部に繰り出していくというお話です。
この映画、なんと2019年にアカデミー賞三冠を獲るほどの人気作品となりました。一方で、様々な賞を獲得し脚光をあびたことで、多くの批判にもさらされたのです。
本日は、映画『グリーンブック 』にどのような批判が投げかけられたのか、そしてそれでもなお僕が本作品を皆様におすすめする理由について紹介したいと思います!
映画『グリーンブック』基本情報
参照:https://movies.yahoo.co.jp/movie/365598/
グリーンブック は『メリーに首ったけ』などを世に送り出してきたコメディの名監督・ピーター・ファレリーが監督する実話に基づいた物語です。
ロードオブザリングにてアラゴルン役を演じたヴィゴ・モーテンセンとムーンライト主演のマハーシャラ・アリがメインキャストをつとめています。
人種に対して個人の認識が変わっていく様子を描いた本作は高く評価され、2019年アカデミー賞にて作品賞、助演男優賞、脚本賞の三冠に輝きました。
映画『グリーンブック 』のあらすじ
時は1962年、ニューヨークの一流ナイトクラブ、コパカバーナで用心棒を務めるトニー・リップは、ガサツで無学だが、腕っぷしとハッタリで家族や周囲に頼りにされていた。ある日、トニーは、黒人ピアニストの運転手としてスカウトされる。彼の名前はドクター・シャーリー、カーネギーホールを住処とし、ホワイトハウスでも演奏したほどの天才は、なぜか差別の色濃い南部での演奏ツアーを目論んでいた。二人は、〈黒人用旅行ガイド=グリーンブック〉を頼りに、出発するのだが─。
引用:https://gaga.ne.jp/greenbook/about.html
映画『グリーンブック』に寄せられた批判とは?
『グリーンブック 』はアカデミー賞作品賞(2019年)に輝いたことで注目の的になりました。
その結果、映画には肯定的な感想のほかに、史実に対する正確さや制作者の差別問題の切り取り方をめぐって多くの批判が寄せられたのです。
まずは、批判されたポイントがどんなところにあったのか、具体的に紹介していきます。
批判その①:白人の救世主
評論家が投げかけた批判の中で最も多かったのが、映画の描写に、白人が非白人を窮地から救い出すという「白人の救世主」的な構図が見られたこと。
演奏ツアー中、シャーリーは人種差別が根強く残る南部地域において数多くの理不尽な差別の被害を受けます。
そのような場面で彼を救おうとするのは、どんな相手でも物怖じせずに立ち向かっていく用心棒・トニーです。
白人が非白人を助ける救世主となる映画に対しては昔から、人種差別主義の潜在的要素を含んでいるのでは?
という批判がなされています。『グリーンブック 』もそのひとつとなりました。
批判その②:歴史的事実との相違
参照:https://realsound.jp/movie/2019/09/post-422165.html
『グリーンブック 』に対して寄せられたもう一つの批判が、歴史的な事実との一貫性についてです。
映画の公開後、シャーリーと家族の関係について観客に誤解を与えうる描写があったことや、トニーとの間柄について誇張された部分があったことなどが、シャーリーの遺族によって指摘されました。
作品の中では、インテリで当時黒人では珍しく裕福な暮らしを送っていたシャーリーが、自身が帰属するコミュニティを見出すことができない様子を描きだすなかで、家族とも疎遠であるかのような語りがなされているのです。
それでも『グリーンブック』をオススメする2つの理由
しかし、このような批判がある中でも、僕は読者の皆さんにぜひ『グリーンブック 』を観てほしいと思います。
なぜか?…それは以下の2つの理由からです。
オススメ①:ドクターシャーリーやグリーンブックについて知るキッカケに!
参照:https://news.line.me/issue/oa-nylonjapannews/4222d50d78f9
シャーリーの遺族からの批判は非常に大切だと思います。
映画が作られる上では制作者によって様々な選択がなされていることを理解しなければいけません。
シャーリーに関する物語の中で、制作者は”シャーリーの精神的な孤独さ”に焦点を当て、その問題を他の物語よりも優先することを選択したのかもしれません。
そのことを理解した上で、僕はまず大事なのはこういう人たちが本当にいたんだということを語り継いでいくことなのではないかと思うのです。
グリーンブックを多くの人が観ることで、ジム・クロウに縛られた時代のアメリカを生き、差別に苦しみながらもその音楽的才能で多くの人々を魅了したドクター・シャーリーという人物の物語が後世に残されるはずです。
もし次の世代にシャーリーについてのストーリーが受け継がれなければ、いつか人々の記憶からも彼の活躍は忘れられてしまうかもしれません。
『グリーンブック 』という映画が世に出たことで、僕たちはドクター・シャーリーという天才的ピアニストとその相棒トニー・リップの人生について知ることができるのです。
またこの映画によって、グリーンブックという当時の黒人たちが旅行する際に欠かせなかった一つの書籍にもスポットライトが当てられます。
グリーンブックとは1936年から1966年まで、ヴィクター・H・グリーンにより毎年出版された黒人が利用可能な施設を記した旅行ガイドブックで発行部数は200万部にものぼったそうです。
特に当時のアメリカ南部では、ジム・クロウ法の適用が郡や州によって異なっていたため、自分たちを受け入れてくれる施設を地域ごとに記したグリーンブックは黒人の間で重宝されました。
映画のタイトルにもなっていたことから、『グリーンブック 』は1900年代半ばの黒人旅行者たちを支えたこの書物の存在を広く知らしめたのです。
オススメ②:差別の問題をユーモラスに問いかける!
参照:https://screenonline.jp/_ct/17252411
映画では、ジム・クロウ下のアメリカにおける黒人差別のシーンが度々登場します。
シャーリーの演奏を堪能しながらも、彼と同じ席で食事をとることは”しきたりだから”といって認めない人々。
シャーリーがコンサートの主演奏者であるにも関わらず、白人が使うトイレではなく見るからに汚い外のトイレを使えと命じる主催者など。
ドクター・シャーリーの音楽的才能を称賛する一方で、決して彼を対等な人間として認めない様子が多く映し出されているのです。
そんな中でもこの作品は、差別という現在も根深く残る問題を、ただ悲しく描くわけではなく、ユーモラスにそしてジョークを交えながら描写します。
旅を通して、無意識に黒人を差別していたトニーは、黒人が置かれている状況、またシャーリーの境遇について少しづつ理解をしていきます。
シャーリーも、何度も危ない場面を救われるうちに、トニーに信頼を寄せていくようになります。
差別という重要な問題について我々に問いかけるなかで、バックグランドも性格も違う二人が、お互いのことを知るようになり、コミカルな会話と共に相棒として絆を深めていくその様子は本当に見事で、観ている我々も一緒に旅について行きたくなってしまうほどです。
映画『グリーンブック』まとめ
今日は映画グリーンブックに対する批判と僕個人の意見をまとめてみました。
いかがでしたでしょうか??
この作品は、性格や背景が異なる人同士が出会い、それまでの認識やイメージが変化していくことで最強の相棒になっていく過程をコメディ要素たっぷりに描いています。この作品を一度見れば、たちまちあなたもシャーリーとトニーのファンになり、そしてもっと彼らの物語を探究してみたくなること間違いなしです!!
まだ観ていない人は、ぜひ一度チェックしてみてください!
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