【奇妙な世界観】芥川賞作家・今村夏子さんのオススメ作品5選!心がざらつく不穏な物語

『むらさきのスカートの女』サムネイル

読みたい小説を探すとき、皆さんはどのように探しますか。

僕は書店に並ぶ本の装丁で惹かれたものを手に取ることが多いのですが、たとえ偶然手にしたとしても一度その作品にハマってしまうと、それからは同じ作家さんの本を読み漁ることが結構あります。

そして、そのようにしてハマってしまった作家さんの一人が、今回ご紹介する芥川賞作家・今村夏子さんです。

今村夏子さんバナー
引用:https://kadobun.jp/feature/interview/152.html

本記事では、今村夏子さんの経歴、そして個人的にオススメしたい小説を5冊をご紹介していきたいと思います!

次読みたい本を探しているという方は、ぜひご参考にしてみて下さい。

 

小説家・今村夏子さんとはどんな人?

今村夏子さんの写真
引用:芥川賞・今村夏子氏「芥川龍之介の本はあまり知りません(笑)」

今村夏子さんは、1980年2月生まれ、広島県広島市出身の小説家です。

2010年『こちらあみ子』(旧題:あたらしい娘)で太宰治賞を受賞し、小説家としてデビューしました。

それ以降『星の子』『あひる』など新しい作品を発表しては大きな話題に。

そして2019年『むらさきのスカートの女』で芥川賞を受賞し、一躍有名作家となります。

 

今村夏子さんの経歴

今村さんは大学を卒業してから小説家になるまで、ホテルの清掃業のアルバイトをしており、仕事の帰り道にふと「小説を書こう」と思い立ったことで小説を描き始めます。そうして完成した『あたらしい娘』(=『こちらあみ子』)が太宰治賞を取り、一気に小説家へと転身したとのこと。

ちなみに小説『むらさきのスカートの女』の主な舞台としてホテルの清掃が描かれており、今村さん自身の経歴が作品に反映されています。

 

今村夏子さんの作風

今村夏子さん『あひる』バナー
引用:https://poppo-cafe.com/ahiru

今村夏子さんの小説は、特に難しい言葉や捻った言い回しをするわけではなく、非常に読みやすいシンプルな文体で紡がれます。

ただ簡単な文体とは裏腹に、描かれる世界観は「日常の中に潜む不穏な空気」であり、その独特な世界観に心がザワッと波立つような狂気を感じる作風が特徴です。まるで寓話を読んでいるかのような不思議な世界は、まさに今村夏子さんならでは。

 

作品と受賞歴

今村夏子さんの作品リスト
引用:https://webstation-plus.com/imamura_natsuko_all_ranking.html

今村夏子さんの発表した作品一覧と、受賞した文学賞を紹介します。

  • 『あたらしい娘』:太宰治賞
  • 『こちらあみ子』:第24回三島由紀夫賞
  • 『あひる』:第155回芥川龍之介賞候補/第5回河合隼雄物語賞受賞
  • 『星の子』:第157回芥川賞候補/第39回野間文芸新人賞
  • 『むらさきのスカートの女』:第161回芥川賞/2019年度咲くやこの花賞
  • 『父と私の桜尾通り商店街』
  • 『木になった亜沙』

こうしてみると、今村さんの作品が文壇において高く評価されていることが分かりますよね。

 

 

小説家・今村夏子さんのオススメ作品5選

それでは、ここから個人的にオススメしたい今村夏子さんの物語を5作品、紹介していきます!

 

おすすめ①:『むらさきのスカートの女』(朝日新聞出版)

第161回・芥川賞受賞作!恐怖とおかしみの不思議な世界観

『むらさきのスカートの女』サムネイル

あらすじ
近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性のことが、気になって仕方のない〈わたし〉は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で働きだすように誘導し……。『こちらあみ子』『あひる』『星の子』『父と私の桜尾通り商店街』と、唯一無二の視点で描かれる世界観によって、作品を発表するごとに熱狂的な読者が増え続けている著者の最新作。
参照:Amazon

おすすめポイント

本作で今村夏子の名前を知ったという方も多いのではないでしょうか。芥川賞受賞をキッカケにこの作品は全国の本屋で平積みされたため、装丁だけでも一度は目にしたことのある方、たくさんいらっしゃると思います。

筆者自身、この作品のタイトルと不気味な装丁に心を惹かれ、思わず手に取ってしまった人間の一人であり、この作品を機に今村夏子さんのファンになってしまった、いわば最初の一冊なのです。

物語は、近所に住む「むらさきのスカートの女」を観察する「私」の視点で描かれます。いつも紫色のスカートを履いていることから、街の人に何となく認知されているその女性。「私」はその女性の不思議な魅力に惹かれ、友達になりたいと思うように。どうしたら彼女と知り合うキッカケが得られるのか、模索しはじめる「私」。そうしているうちに、彼女を執拗に追いかけストーカーまがいの行動を繰り返す「私」自身に、読者である我々は違和感を覚えます。

おかしみのある滑稽なストーリーの中に、どこからか不穏な空気感が漂い、それがどんどんと確かな違和感へと変わっていく。今村夏子さんの描く「日常の中に潜む不気味」な世界観が堪能できる作品です。そして本作のラストは、心がざわっとするような見事なオチ。一度読めばファンになること間違いなしの一冊です。

  • ページ数:160ページ(単行本)
  • 収録話:『むらさきのスカートの女』

🏆第161回芥川賞/2019年度咲くやこの花賞

  Amazonで『むらさきのスカートの女』を見る  

 

おすすめ②:『こちらあみ子』(筑摩書房)

太宰治賞の審査員を唸らせた衝撃のデビュー作!

『こちらあみ子』サムネイル

あらすじ
あみ子は、少し風変わりな女の子。優しい父、一緒に登下校をしてくれる兄、書道教室の先生でお腹には赤ちゃんがいる母、憧れの同級生のり君。純粋なあみ子の行動が、周囲の人々を否応なしに変えていく過程を少女の無垢な視線で鮮やかに描き、独自の世界を示した、第26回太宰治賞、第24回三島由紀夫賞受賞の異才のデビュー作。書き下ろし短編「チズさん」を収録。
参照:Amazon

おすすめポイント

今村夏子さんが小説家としてデビューするきっかけとなった本作。旧題は『あたらしい娘』。

処女作でありながら、多くの審査員、そして書店員に衝撃を与えた凄まじい物語の力をひしひしと感じる一冊です。

あみこの純粋さや人を想う気持ちは、いつも他人の常識や社会の規範から外れていて、良かれと思ったことで人を怒らせ悲しませてしまう、不器用でちょっと足りないあみこ。そんな少女・あみこが生きる世界を、あみこ本人の無垢な視点で描きます。もっと器用に、何も言わずに、人に倣って、そうやって生きていけば皆から愛されるかもしれないけれど、あみこはどこまでもあみこであり、あみこなりの愛情表現で人を愛そうと努力します。そんなあみこのひたむきなパワーに圧倒され、ふとした拍子に自然と涙が溢れてくるような、驚きの読書体験でした。

また、本作に収録されている書き下ろしの『ピクニック』も衝撃的な物語。心のざらつき、不気味な違和感はまさに今村さんならではの世界観です。ちなみにこの『ピクニック』は、2021年公開の映画『花束みたいな恋をした』にて主人公の絹と麦が好きな小説として取り上げられた物語でもあります。この映画をきっかけに今村夏子さんを知った方もいるのではないでしょうか。

  • ページ数:237ページ(文庫本)
  • 収録話:『こちらあみ子』『ピクニック』『チズさん』

🎥2022年映画公開

🏆第26回太宰治賞/第24回三島由紀夫賞受賞

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おすすめ③:『星の子』(朝日新聞出版)

宗教2世の葛藤を描く意欲作

『星の子』サムネイル

あらすじ
主人公・林ちひろは中学3年生。 出生直後から病弱だったちひろを救いたい一心で、 両親は「あやしい宗教」にのめり込んでいき、 その信仰は少しずつ家族を崩壊させていく。 第39回 野間文芸新人賞受賞作。
参照:Amazon

おすすめポイント

宗教を信仰する親の元に生まれた「宗教2世」が直面する問題を、2世本人の視点で描いた作品です。

はたから見れば「あやしい宗教」にのめり込む良くない親なのかもしれないけれど、主人公のちひろにとっては自分の大切な親であり、そこにはちゃんと愛情もある。だからこそ余計に、親と引き離そうとする親戚や、宗教を「怖いもの」として拒絶したり揶揄したりしようとする世間との間で、主人公は葛藤するのです。

誰しも自分の親や、自分自身が生きてきた世界は信じたいものですよね。世間的に宗教を敬遠する風潮があったとしても、そこは自分が生きてきた世界。世間に説得させられて宗教を否定することは、自分自身そのものや自分の親を否定するようなことであり、そう簡単に割り切れるようなことではありません。

第3者の視点ではなく、宗教の中にいるちひろの視点で描かれるからこそ、さまざまな気付きが得られる良作です。何を信じていても普遍的な愛がそこにあり、それは誰からも否定されるべきでない大切なものなのだと思うと、物の見方が変わってくる素晴らしい作品です。

  • ページ数:256ページ(文庫本)
  • 収録話:『星の子』

🎥2020年映画公開(主演・芦田愛菜)

🏆第39回 野間文芸新人賞受賞

  Amazonで『星の子』を見る  

 

おすすめ④:『あひる』(KADOKAWA)

あひるを迎えた我が家で起きる違和感の連続

『あひる』サムネイル

あらすじ
読書界の話題をさらった芥川賞候補作「あひる」を含む、著者の第二作品集。我が家にあひるがやってきた。知人から頼まれて飼うことになったあひるの名前は「のりたま」。娘のわたしは、2階の部屋にこもって資格試験の勉強をしている。あひるが来てから、近所の子どもたちが頻繁に遊びにくるようになった。喜んだ両親は子どもたちをのりたまと遊ばせるだけでなく、客間で宿題をさせたり、お菓子をふるまったりするようになる。しかし、のりたまが体調を崩し、動物病院へ運ばれていくと子どもたちはぱったりとこなくなってしまった。2週間後、帰ってきたのりたまは、なぜか以前よりも小さくなっていて……。なにげない日常に潜む違和感と不安をユーモラスに切り取った、河合隼雄物語賞受賞作。
参照:Amazon

おすすめポイント

『こちらあみ子』の文庫版に収録された『チズさん』を発表して以来、実に2年ぶりの作品となった本作。文学ムック『たべるのがおそい』vol.1にて発表されるや否や、たちまち話題となった今村ファン待望の作品でした。

ある日、両親があひるを連れて帰ってきたことをきっかけに日常が歪んでいくストーリー。「のりたま」と名付けられたあひるはたちまち近所の子供たちの間で評判となり、いつもは静かだった家が賑わうようになります。しかし、病気がちになり動物病院に連れていかれたのりたまは、その後なんだか別人のような姿で帰ってきて…。これは本当に「のりたま」なのか。誰も気にせず、以前と同じようにそのあひるを「のりたま」として可愛がる様子が徐々に不気味に見えてくる、これまた今村さんの世界観が全開な作品です。

他にも2篇の物語が収録されており、この2篇がまたトリッキーに構成されていて飽きさせません。どことなく児童文学の香りも感じさせる今村夏子さんの多才さに驚く一冊です。

  • ページ数:176ページ(文庫本)
  • 収録話:『あひる』『おばあちゃんの家』『森の兄妹』

🏆河合隼雄物語賞受賞

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おすすめ⑤:『父と私の桜尾通り商店街』(KADOKAWA)

今村ワールドを隅々まで堪能できる珠玉の短編集

『父と私の桜尾通り商店街』サムネイル

あらすじ
違和感を抱えて生きるすべての人へ。不器用な「私たち」の物語。桜尾通り商店街の外れでパン屋を営む父と、娘の「私」。うまく立ち回ることがきず、商店街の人々からつまはじきにされていた二人だが、「私」がコッペパンをサンドイッチにして並べはじめたことで予想外の評判を呼んでしまい……。(「父と私の桜尾通り商店街」)全国大会を目指すチアリーディングチームのなかで、誰よりも高く飛んだなるみ先輩。かつてのトップで、いまは見る影もないなるみ先輩にはある秘密があった。(「ひょうたんの精」)平凡な日常は二転三転して驚きの結末へ。
参照:Amazon

おすすめポイント

本作は、今村夏子さんの世界観をギュッと詰め込んだ短編集です。サクッと読める尺ですが、心にどこか引っかかるザラついた手触りの作品ばかり。何の変哲も無い日常の中にシュールでファンタジー性のある違和感が潜んでいる今村夏子色全開の世界観を堪能できますよ。

筆者は個人的に本作の短編の1つ『ひょうたんの精』がイチオシであり、ぜひおすすめしたい作品です!チアリーディング部の先輩が太って痩せて太る物語…と説明するならばこうなってしまうのですが、とにかく面白い。この短編集の中でも特にファンタジー性の強い話ではあるのですが、発想から世界観、最後のオチまで圧巻の完成度であり衝撃を受けました。

他にも『せとのママの誕生日』『モグラハウスの扉(書き下ろし)』など、今村さんの世界はどこから着想を得てくるのだろう、と驚いてしまうような絶妙におかしい物語が多数。ぜひ読んでみて下さい!

  • ページ数:240ページ(単行本)
  • 収録話:『白いセーター』『ルルちゃん』『ひょうたんの精』『せとのママの誕生日』『モグラハウスの扉(書き下ろし)』『父と私の桜尾通り商店街』

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その他おすすめの今村夏子作品はこちら

他にも今村さんは小説を発表しています。番外編としてご紹介します!

 

『木になった亜沙』(文藝春秋)

今村夏子2冊目の短編集!より進化した奇妙な世界観

『木になった亜沙』サムネイル

あらすじ
誰かに食べさせたい。願いがかなって杉の木に転生した亜沙は、わりばしになって若者と出会う(「木になった亜沙」)。どんぐりも、ドッジボールも、なぜだか七未には当たらない。「ナナちゃんがんばれ、あたればおわる」と、みなは応援してくれるのだが(「的になった七未」)。夜の商店街で出会った男が連れていってくれたのは、お母さんの家だった。でも、どうやら「本当のお母さん」ではないようで…(「ある夜の思い出」)。『むらさきのスカートの女』で芥川賞を受賞した気鋭の作家による、奇妙で不穏で純粋な三つの愛の物語。
参照:Amazon

  • ページ数:155ページ
  • 収録話:『木になった亜沙』『的になった七未』『ある夜の思い出』

  Amazonで『木になった亜沙』を見る  

 

他にも新作が発表され次第、レビューとともに更新していきます!

 

 

今村夏子さんのオススメ作品・まとめ

今村夏子さん写真②
引用:https://luckmount.net/imamura-natsuko-2902

さて、いかがでしたでしょうか。

小説家の描く世界観はそれぞれの特色があり、個性が作品に色濃く反映されています。とりわけ今村夏子さんの世界観は読者に強烈な印象を残す、奇妙であり、不穏であり、でも愛おしくもある、そんな作品に溢れています。あまり小説を読まないという人も、今村さんの作品は非常に読みやすいので、ぜひ一度読んでみて下さい!

特に『むらさきのスカートの女』は、長さや文体、そしてストーリー的にも、普段小説を読まない人にもオススメできる一冊です。そして個人的にぜひ読んでもらいたいのは、『父と私の桜尾通り商店街』に収録されている『ひょうたんの精』。こちらも短編で読みやすく、その巧みな構成力に小説の面白さを感じることができると思います。

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以上、小説家・今村夏子さんのオススメ作品のご紹介でした!

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